飲食店の原価率30%は安い?高い?【かき氷は何%?】

 

飲食店の原価について

飲食店を経営するに当たって、
とても重要な
“原価率”
というカテゴリー

これを紐解いて考えてみたい。
誰もが一回は
言ったこと・思ったこと・聞いたことはあると思う

「これ原価にしたら○○円ぐらいじゃない?」

 

という言葉。

 

例えばBARで1杯1500円のカクテルを飲んだ時、

内心

「高い〜!これ原価にしたら100円もいってないっしょ!」


とか、

ちょっと高めのカフェ行ってコーヒー一杯1000円だった場合、

「コメダ珈琲店の方が美味しいのに、コメダの2.5倍する〜!」

とか
僕らの店のかき氷だって

「いくら”幻のふわふわかき氷”言うても、元は水だから、原価かなり安いんじゃない!?」
みたいな
思われることもあると思うのですが、


この
【飲食店の原価に対しての考え方】
に関して、是非ご一読ください。

重要なキーワードは”想像力”

これ知ってたらお客さんも店側も「ありがとう」の交換がより多く生まれるような気がします。

それでは

当店のかき氷を事例に用いて説明を 、

いってみましょう。

かき氷がお客様の元に届くまでにかかる経費

原材料

うちの店のかき氷は2018年8月現在
700円〜1200円の幅で提供しています。

 

材料としては

・密度の高いブロック氷
・かき氷蜜
・練乳
・各種フルーツ
・バニラや抹茶アイス
・飾り付けのミント

実際にかき氷が提供されて、
目視で確認できる”原材料”はこれぐらいでしょうか。
ここで一つ重要なお話。

 

お客さん目線の”原価”というのは
ここで終了してしまうパターンが非常に多く見受けられます。


「氷と、蜜と、フルーツと、、(頭の電卓カチャカチャ、、、)そんなに原価かかってないじゃん!」みたいなことです。

ここからは、
“経営者目線”の原価について紐解いて解説していきます。

つまり、
「何もない状態から、あなたの目の前にかき氷が登場するまでにかかった道程とそれに伴いかかった費用」についての解説であり、

かき氷の原価、

というより、

お客さんに”満足”に対してかかった原価についての解説です。

 

かき氷機代とそのメンテナンス代

かき氷の原価として、次に想像しやすいものに”かき氷機”が来ると思うのですが、

かき氷をふわふわに仕上げるための肝心要がこの機械。

機械の購入代、

そしてそのメンテナンス。

鋼の刃を年に2-3回変えるのですが、

それも一本5000円以上するので、

年間にするとボチボチです。

空間・場所代

BARなんかは分かりやすく、
席に座ったら席料としてチャージ料金がかかります。

なので「この場所、空間にお金を払ってる」という実感を得やすいと思います。

ただ普通のカフェも、
チャージ料を取っていないだけで、
空間にはしっかりお金をかけています。

賃貸の場合は、もちろん毎月家賃が発生していますし、

僕らみたいな所有物件の場合でも、
固定資産税や、

家具家電が壊れた場合の補填費用だったり、

お客さんがこぼして使えなくなった床マットを変えたり、

レイアウトをオシャレにするために購入した細々な物品や照明だったり

広い店内の冷暖房費もバカにならない。

細かく挙げ出したらキリがないですが、
いろいろとあります。

店に入って、
「涼しいな〜ソファ気持ちいいな〜なんだかオシャレだな〜」も価格に織り込まれていますよという話です。

無料提供している各種サービス

 

無料で出してるお冷・コップ・おしぼり

無料で利用可能なトイレ・ペーパー・手洗い場・石鹸なども、

 

無料なのが当たり前すぎて見えてこないですが、もちろんここにも費用がかかっています。

広告代(お客様が来店されるための導線デザイン)

・HP
・各種SNS
・看板作成・設置

・チラシ

これも結構しますよ〜!

場合によってはここが一番お金がかかります。

ただ、そもそもこれが無ければ、
店を見つけてくれる人も半減するわけですから、ちゃんと経費を割いています。

でも結局はこの広告費も、

売上の一部から補填する以外ないわけで、

提供されるかき氷の原価の一部と言っても過言ではありません。

人件費

単純にスタッフに払う賃金はもちろん、

バイトを募集・スカウトするためにかけた労力とコストもなかなかのものです。

島ならではのコスト

配送代

ブロック氷が8個入った段ボール1ケースを船で輸送するのに200円払っているので、

陸地でかき氷屋を営む場合より、
ブロック氷1個に対して25円増しで購入しているという計算になります。

それ以外にも、
西尾市内での車移動&佐久島内での車移動を経て氷を持ってくるので、車両2代の維持費もかなりのものです。

スタッフの交通費

名古屋方面からスタッフを呼ぶことが多いので、
船の往復が1620円と、
交通機関や車代含めて、

1日でも働いてくれたスタッフには往復3000円の交通費を渡していますので、

これも都会に比べると割高ですね。

虫や雑草対策費

店内に虫が入らないように、
また虫が入ってきてもすぐ退治できるように購入する諸々の殺虫剤や、

店前の庭や駐輪場の草を枯らす薬剤も、

年間2-5万とかかかります。

シロアリ対策費用

去年のGWに店内入口にシロアリが大量に出て、営業停止になりかけたので、

結構な費用をかけて業者さんに対策してもらいました。

トイレの下水処理代

マンションやアパートではかからないと思うのですが、

佐久島だから?
か分からないですが、
下水処理代は年間4-5万かかります。

わーお!

 

お客さんの目には見えないけど実はかかってるんだよシリーズ

新作開発のためにかけた資金

これも時と場合によっては大きいです。

いろんな食材を買ってきては試して、

買ってきては試して、

 

を繰り返してようやく誕生する新メニューや名物かき氷。

 

その間に使った食材費や、

不採用になって廃棄になった食材の費用も、

 

そして器も毎年モデルチェンジしていってるのでその費用も、

どこからか経費が沸いて出てくるわけではないので、

 

売上の中から捻出して予算組みしなければいけません。

トラブル費

何かしらのトラブルで氷が溶けたりフルーツが腐ったりした場合の補填費用のことですね。

大なり小なり必ず発生するものなので、

これも予算に組み込んでおく必要があります。

これら全てを把握していないと経営が危ない

かき氷一つ、
お客さんに届けるまでの工程は果てしなく長いです。

そしてそれをお客さんに全部理解してくれ〜とは思いませんが、

 

大変なのは、

【経営者自身もよく分かってない場合が多い】

ということ。

もう一度。

【経営者自身もよく分かってない場合が多い】


これひじょーに危険です。

目の前の物事を一回細分化して数字に落とし込んでみて初めて見えてくるものがあります。

でないと、

自分が提供したものをお客さんから
「値段高くない?」とか「これじゃ安すぎるよ!」なんて言われた時に、

「値段変えた方が良いかなあ?」
なんて悩む経営者も割と見かけます。

それはおそらく自分の脳内に
「提供してるものにかけてる全ての費用」
がインプットされてないからだと思います。

僕は全部インプットした上で”適正価格”をひねり出しているという自負があるので、いつも自信満々で提供しています。
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“適正価格”の出し方としては、
お店の利益を最大限に保ちつつ、

 

お客さんの満足度が高い(値段以上の満足度があり、口コミでちゃんと広げてくれる)ラインを見極めた上で、

2.3ヶ月に一回は値段とメニュー表を細かく更新しながら、

仮説と検証を積み重ねて設定しています。

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原価はちょうど30%に設定しよう!
みたいな単純な方程式で食材を揃えたとして、

例えば僕らの店みたいに、
「離島だから余計なコストが多分にかかる」という概念を理解して数字が頭に入ってなければ、

知らないうちに、
総合的な原価率は50%とか〜80%とかに跳ね上がって、消費税と人件費の支払いで利益は消え、

「あれ?手元に残るのこれだけ?」

みたいなことにもなり、

自分の首を絞める結果にもなりかねません。

経営者自身がまずこの
適正価格を設定する方程式を頭に入れておく必要があると思います。

 

それと、

すき家の牛丼

コメダ珈琲のモーニング

ココイチのカレー

100円寿司

 

この辺りの大手企業は数の力、

すなわちスケールメリットをがっつり使って

原価率40-80%あたりを攻めたりしてますが、

僕らみたいな個人店舗・零細企業がそれを真似したら確実に滅びます。笑

 

なので大手と競争して値段を下げることはやめて、

“創意工夫で付加価値の付け方を極める”

この一点集中で闘っていくしかないと分析しています。

原価や付加価値についての考え方を学ぶ手っ取り早い方法(余談)

それは、

「高級店に足を運ぶ」

だと僕は思っています。

「3000円の居酒屋に10回行くぐらいなら、3万円のお店に1回行く方が学びになる」

というのはよく聞く話だとは思いますが、

僕もその通りだと思います。

 

高級店は何故それだけのお金を取っているのか、まじまじと観察して、

3000円の店との違いを10個でも100個でも探しに行くと、めちゃくちゃ勉強になります。

例えば
・玄関の豪華さ・手入れにすごい費用を投入している

・おしぼりの温かさが絶妙

・お通しが豪華な上に、一品ずつ店員さんが説明してくれる

・ワインについて尋ねたら「詳しい者を連れて来ますので少々お待ちください」のスピード感じゃなくて、店員さん全員が説明できる知識を兼ね備えている

・こちらの反応を見て臨機応変に対応してくださる接客レベルの高さ=スタッフ教育にすごく時間をかけている

・トイレ内が清潔、こまめな清掃の跡が見られる

・帰り際のお辞儀は、僕らが退店して見えなくなるまでしている。

などなど。
挙げ出したらキリがない。

要は、

「3000円の店と3万円の店の違いは”料理の原価”以外に何があるかな?」

という視点を鍛えると、
自ずと自分の店の全容と改善点が解明できるという話です。

まとめ

話が脱線したようなしてないような、

マッハで殴り書きしましたが、

要約すると言いたかったことは2つ

 

経営者側は

【お客さんに商品を届けるまでにかかっている費用をちゃんと細かく把握することによって、適正価格を見出そう。そして価格にふさわしい価値付けをしよう】

ということと、

 

お客さん側も

【一つの商品が目の前に届けられた際に、そこまでにかかった道のりや奥行きも察せるようになれたら、なんだかハッピーだよね】

ということ。

 

 

僕らはかき氷だけを売ってるわけではなく、

“佐久島での思い出”を商品にしている。

BARはお酒だけを売ってるんじゃない。

カウンター越しの会話や、

バーテンダーの立ち振る舞いやお洒落な空間によって得られる

“非日常感”を商品にしている。

僕が経営していた旅BARも、お酒やフードではなく

“日本一友達が出来やすい雰囲気”

を商品にしている。

 

全ての商品には奥行きとストーリーがある。

この記事を読むことによって、

いろんなお店に行くことを、違った視点からも楽しめるようになって頂けたら幸いです。